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スピーカーも鳴らせる半導体無帰還ヘッドホンアンプの製作-その2
2009年8月製作 
2011年7月DCサーボ出力にコンデンサ追加


前作の記事はこちら
前作のchumyアンプ記事はこちら

はじめに
1.設計
2.製作
3.調整
4.音

はじめに
 以前、作った2SB733/2SD773ヘッドホンアンプですが、無理に詰め込んだのと改造が重なって収集がつかなくなったので、新しく基板を作り直すことにしました。スピーカーもドライブできるようにする点は同じですが、出力段の電源を安定化しないで作ってみることにします。

1.設計
(1)アンプの回路
 回路図を示します。最近、よく使っているフォールデッドカスコードとカレントミラー増巾を組み合わせた回路です。初段は、デュアルFETの2SK389のBLランクですが、2SK364のBLランクでもOKです。BLランクが手に入らない場合は、GRランクでIDSSの大きめのものを使用して下さい。利得は、10倍程度で十分なので、初段のソース抵抗値を470Ωと大きくしています。
 初段の反転入力側はDCサーボからの電圧を受けますが、反転入力をショートするためのジャンパ端子を入れています。DCサーボの信号を簡単に外すためです。この端子を設けたおかげで、調整が楽になりました。
 カレントミラーはデュアルトランジスタの、2SA1349を使いましたが、手に入らない場合は、2SA1015或いは2SA970あたりのGRランクを使用して下さい。フォールデッドカスコードには、2SJ509を使いましたが、2SJ313あたりでもOKです。FETがいやだという方は、2SA1376あたりのPcが大きく、hfeの高いものを使用して下さい。
 2SJ509の下にある負荷抵抗は、3kΩと小さめの値にしています。また、バイアス調整回路の上側だけに接続しています。これは、バイアス調整回路を流れる電流を一定にし、バイアス電圧を安定させるためです。バイアス電圧調整回路のトランジスタは、基板上にはコネクタを出し、2SC1815を繋ぎます。回路図には現れていませんが、2SC1815のベースには直近に1kΩの抵抗を入れ、配線を引き回したときに不安定になるのを防ぎます。
 プリドライバ段の出力とドライバ段の入力は、パターン設計の関係でジャンパで接続します。基板の裏側に配線するのがいいと思います。
 プリドライバ段は2SA1015/2SC1815、ドライバ段は2SB733/2SD773、出力段は2SB733/2SD773の5パラです。最終段の5パラにしている2SB733/2SD773は、hfeの差が5%以内のものを選別してあります。
 トランジスタの場合は、電圧増幅段から電流供給を受けますので、2段ダーリントンだとhfeが不足して電圧増幅段の電流変化を起こす可能性があります。NFBを使っていれば2段ダーリントンでもいいのでしょうが、無帰還アンプなので3段ダーリントンとし、電圧増幅段への影響を少なくしています。
 出力段は熱暴走を防止するためエミッタ抵抗は大きめの5.6Ωにし、またバイアス調整回路のトランジスタと熱結合しています。出力インピーダンスは1Ω程度になりますが、ヘッドホンでの利用が主ですから、問題ない値です。また、この程度の出力インピーダンスであればスピーカを十分駆動できます。








1枚にまとめた図はこちら

(2)DCサーボ回路  (2007年1月2日変更)
 ヘッドホンアンプとして使うため、ドリフト(オフセット)は数mV以内、可能ならば1mV以内に納める必要があります。 ドリフト(オフセット)が大き いと、直流バイアスの影響で極端に低音が強調されたような音になってしまいます。このため、DCサーボ回路を組み込みました。
 DCサーボ回路を以下に示します。DCサーボ回路による音質への影響を抑えるため、大きな値の抵抗を使っています。こうなると、トランジスタ入力タイプ のOPアンプはバイアス電流の影響が出るので、FET入力タイプのOPアンプにします。ここでは、LF411を使いました。
 Aから入ってきた信号は、220kΩと47μFのハイカットフイルターを通った後、OPアンプに入ります。 OPアンプの 入力には、ダイオードの保護回路を入れています。 LF411は47μFを帰還回路に入れ、音声帯域のゲインを1にしています。 OPアンプの出力は、 LF411からのノイズを防ぐため、ハイカットフィルターを通ってアンプの反転入力側に戻ります。
 ドリフト電圧(オフセット電圧)の調整は、反転入力側に微少電圧を供給する調整回路を入れて行います。三端子レギュレータの出力を抵抗と汎用小信号ダイオードで±0.6Vを作り、これを更に分圧して微少電圧を供給します。LF411の電源は、三端子レギュレータの出力を10Ωと100μFのCRフィルターを通して供給しています。電源から回り込むノイズの影響を抑えようとしてみました。





(3)保護回路
 保護回路は一般的なものです。回路図に現れていませんが、今回はヘッドホン用とスピーカー用にリレーを2個使い、スイッチで切り替えるようにしました。リレーだけを切り替えると、リレーの逆起電力が問題になりそうなので、各々のリレーにダイオードを入れました。リレーがOFFに なっている時或いはOFFになった時にLEDが点灯するようにしています。
 


(4)電源
 電圧増幅段とドライバーの1段目には±22Vの電圧を供給します。 定電流ダイオードとツェナーダイオードで基準電圧を作り、470Ωと100μFのCRフィルターでノイズを減少させます。これをトランジスタに供給する無帰還タイプです。トランジスタは、2SA1358/2SC3421です。ベースの270Ωは発振防止用ですので、トランジスタの直近に配置しました。



 出力段の電源は、安定化しないで使っています。整流ダイオードの後ろに10,000μFのケミコンを入れて平滑し、無信号時に±12V程度の電圧が掛かかるようにしています。

2.製作
(1)プリント基板
 プリント基板には、アンプ回路の他に、電圧増幅段の定電圧電源、DCサーボ回路を組み込みました。10cm×15cmの基板に左右のアンプを組み込んだので、かなり窮屈です。


プリント基板の部品面(図をクリックすると拡大図が見えます)

(2)部品の取付
ユニバーサル基板を使って組み立てましたが、サイズが小さかったためにかなり窮屈になってしまいました。 注意点としては、バイアス調整用のトランジス タと出力段のトランジスタの熱結合は絶対に必要です。 ここでは、出力段の中央の石とエポキシ接着剤でくっつけています。 これを忘れると、出力段に電流 が流れすぎて出力段のトランジスタを壊してしまいます。 ケースは、とりあえずA4サイズのプラスチック製道具箱を使いましたが、予想外にアンプと定電圧 電源の発熱があるので、金属製ケースに変更する予定です。
 






 バイアス調整回路のトランジスタ(2SC1815GR又はBL)と出力段のトランジスタの熱結合ですが、 出力段の中央の石とエポキシ接着剤でくっつけています。2SC1815のベースには直近に1kΩの抵抗を入れ、 配線を引き回したときに不安定になるのを防ぎます。

(3)配線
 アース配線ですが、ヘッドホンアンプの場合は、ヘッドホンジャックの所で必ず左右のアースが共通になります。このため、本機では左右 独立電源であるものの入力部分から左右共通のアースとしています。これは、左右独立のアースとするとヘッドホンジャックのアースと本機の前に繋がる装置 の左右共通のアース(殆どの装置はそうだと思うが)出力端子との間に大きなループができて、ハム発生の原因になるためです。ヘッドホン用のアースは、下図のようにアンプ基板上に共通アース端子を設け、そこから配線しています。
  スピーカー用は、アースに流れる電流の影響を軽減するため整流平滑基板から配線しています。

 全体の配置です。左下の小さな トランスは電圧増幅とプリドライバ段用、左上のトランスはドライバと出力段用です。整流平滑回路と保護回路は、前回のアンプから流用したユニバーサル基板です。



 ヘッドホン端子には、念のため、インピーダンス補正用に47Ωと0.01μFのCRを付けています。スピーカー端子には、10Ωと0.1μFのCRを付けました。

(4)アンプの外観
 ちょっと大きめのケースに収めました。

3.調整
 組み立てが終了したら、配線の間違いがないかチェックします。続いて、バイアス調整回路の半固定抵抗にテスターを当て、抵抗値が最大になるように回します。これをやっておかないと、出力段の電流が流れすぎて、調整が大変です。DCサーボのLF411付近にある半固定抵抗は、中央になるようにしておきます。あと、初段の反転入力側のジャンパ端子をアースとショートしておきます。
 準備が終わったら、スライドトランスを接続し、各部の電圧を測定しながら徐々に電圧を上げて行きます。異常があったら、電源を切り、問題の箇所を確認します。
 一応動作することが確認できたら、初段の定電流回路の電流を6mAに調整します。定電流回路の上側の1kΩの抵抗の両端電圧が6Vになるようにします。次に、出力端子の電圧が0~-1V付近になるようにマイナス電源側の2SC3381の下の半固定抵抗を調整します。
 出力段のバイアス 電流を30~50mA(個々のトランジスタに6~10mA)に調整します。この調整を何度か繰り返し、30分間程度経過後に最終調整します。
 一端電源を切り、初段の反転入力側のジャンパ端子をオープンにします。
 もう一度電源を入れ、保護回路が働かないことを確認します。DCサーボの調整抵抗を回して、出力端子の電圧が10mV~-10mVに収まるように調整します。30分間くらい経過後にもう一度出力電圧を確認します。
 最後に、初段の反転入力の電圧を測定し、0V付近であることを確認します。もし大きくずれていたら、マイナス電源側の2SC3381の下の半固定抵抗を調整し、0V付近になるように調整します。

4.音
 低インピーダンスのヘッドホン(audio-technica ATH-C7 16Ω)で聞いても、雑音は気になりません。ちゃんとした基板に納めたせいか、前作よりも細かい音が聞こえるようになり、また、素直な音になったような気がします。スピーカーを鳴らすくらいの出力がありますので、大音量でも音が安定しています。
 最近(2011年7月)になって、他のアンプでDCサーボの出力に100μFのコンデンサを入れてみたところ、クリアな音に変わりました。そこで、 このヘッドホンアンプも下図のようにコンデンサを入れてみました。反転入力側の2.2μFとパラにバイポーラコンデンサ(MUSEの100μF)を入れました。 やはり、音がクリアになるようです。
 DCサーボ回路は、電源周りからノイズが入らないように工夫しているのですが、このコンデンサの追加で音が変わるということは、
オペアンプのノイズが大きく影響している可能性があります。




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