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2SK117ゼロバイアスMCヘッドアンプ(2018年6月)

2SK30ATMを10個パラにしたゼロバイアスヘッドアンプはこちら
2SK68Aを8個パラにしたゼロバイアスヘッドアンプはこちら

はじめに
1.設計と製作
 (1)FETの選択と動作条件
 (2)アンプ基板
 (3)電源基板
 (4)その他の部品など
2.利得、ノイズ、音など

はじめに
 既に、2SK30ATMを10個パラにしたゼロバイアスヘッドアンプ(2009年8月)、2SK68Aを8個パラにしたゼロバイアスヘッドアンプ(2009年9月)は作っていますが、MCヘッドアンプの定番である2SK117を使ったアンプは作っていませんでした。2016年に無帰還パワーアンプの製作会を行ったとき、初段に使った2SK117がある程度まとまって手元にあり、IDSSの揃っ ヘッドアンプのゲインは、前作の経験から20倍程度が適当であると思われるので、それに合わせた定数を決めていくことにします。

1.設計と製作
(1)FETの選択と動作条件
 計算式などは前回と同様です。選別した2SK117のIDSS決定、負荷抵抗決定の説明に必要なので再度載せます。
 無線と実験1976年12月号の牧誠さんの記事からFETゼロバイアスヘッドアンプの設計に必要な式を引用し、計算してみます。 FETは、IDSS(mA)、gm0(mS)とその代表値、IDSST、gm0Tには下式のような関係があります。 (実際のFETは、IDSS が IDSST から離れるに従い、差が大きくなるようです。)

  (1)

 ゼロバイアスでアンプを組む場合、ドレイン抵抗をRD(kΩ)とすると、増幅倍率Aは、
   A=RD×gm0    (2)

 RD(kΩ)に発生する電圧V(V)は、
   V=RD×IDSS    (3)

 となります。

 使用するFETが決まれば(IDSST、gm0Tが決まる)、IDSSから下式によりRDが求まります。

           (4)
 (3)式からRDの電圧降下V(V)が求まります。

 手元にある2SK117はBLランクなのでIDSSが6mA以上のものです。実際は、6.5mA以上のものになります。IDSSが6.5mAのものは、無帰還アンプに使いにくいためにある程度余っています。これを使って20倍程度のゲインになるように計算してみました。2SK117のgm0Tは22(mS)くらいなので、ゲインを20倍にしようとすると式(4)から負荷抵抗は1.07kΩになります。抵抗を入手の容易な1kΩにすると、ゲインは18.7倍(25.4dB)になります。 これで丁度いいくらいの値になります。
 このIDSSの2SK117はかなり余っているので、5パラくらいにしてノイズの低減を図ることにしました。

(2)アンプ基板
  回路図は以下のようになります。
 抵抗はBISPAのLGMSFを使ってみました。入力の抵抗は、汎用的に使えるように220Ωにしました。
 コンデンサですが、出力側には、次に繋がるEQアンプに余計な高周波が入らないように3300pFのフィルムコンデンサをパラに入れて200kHz以上のノイズを減衰させるようにします。ここにはポリプとピレンコンデンサを使っています。  出力の直流カットコンデンサは、負荷抵抗が47kΩで5Hz以下をカットするようなフィルムコンデンサを使います。0.33μFをパラにしているのは、手元にあるマルコンのTACコンデンサを使いたかったからです。
 基板上の電源部分には容量の大きなケミコンと、OSコンをパラにしてインピーダンスの低減を図るとともに、電源基板と組み合わせてCRフィルタを2段に重ね、ノイズを低減させます。電源側の120μF、320μF、680μFはOSコンといいますか、固体導電性高分子コンデンサを入れています。アンプ側に近い2.2μFはメタライズ積層ポリエステル(日精MMTコンデンサ)、0.1μFはポリプロピレンコンデンサ(東信工業UPZ)にしています。


 1枚しか作らないので、秋月のユニバーサル基板AE-B2を使います。電源のコンデンサが多く載るので、大きさを確認しながらパターンを決めます。また、コンデンサが有効に働くように電流の流れが逆流しないように決めました。





(3)電源基板
 電源は、前作のものをそのまま使おうかと思ったのですが、より安定に動作させた方がよかろうと思い作り直すことにしました。回路図を以下に示しますが、ブリッジダイオードをショットキーにし、三端子レギュレータの周りを安定動作するように定数を変更します。0.1μFのフィルムコンデンサの数を増やし、高周波のノイズを減らそうとしてみました。


 基板は秋月のユニバーサル基板AE-B2を使います。こちらのパターンもなるべく電流が逆流する部分を減らすようにしてみました。










(4)その他の部品など
 ケース、トランスなどはは前作のものをそのまま流用しています。今回は、LEDの色をレトロ風に電球色にしてみました。取り付けてあるLEDブラケットは、接着剤で止めてあるのでバラすことができます。


 このLEDを秋月で購入できるオレンジ色のOS50AA3131Aに交換してみました。 下の写真のようにうまく納まります。セメダインのスーパーXで接着して取り付けました。最近のLEDは僅かな電流でも明るく光ってしまします。明る過ぎるとレトロな雰囲気が出ないので、試行錯誤した結果約1mAくらい流すことにしました。点灯してみると、電球色のレトロ感が再現できていると思います。



2.利得、ノイズ、音など
 組み上がった後に、Analog DiscoveryとFRAplusアダプタを接続し、FRAplusで測定してみました。ゲインは予想よりも微妙に低めの25dBでした。周波数特性もほぼ予想どおりです。



 歪率はAnalog Discoveryのノイズレベルに埋もれる傾向があるので参考程度になりますが、ほぼ予想どおりの結果になっています。



 ノイズは、前作と同様に聴感上では感じないくらいの非常に低いレベルです。
 さて、手作りアンプの会 三土会でアモルファスMCトランスSH-305MCと聴き比べする機会がありました。フルオートプレーヤ:SL-10、T4Pカートリッジ:P310MC、MCトランス:SH-305MC、コントロールアンプ;Su-A4 というテクニクスのシステムの中で、MCトランスを置き換えて聴くことができました。
 SH-305MCはトランスらしくないシャープな音作りになっています。Su-A4内蔵のMCヘッドアンプに近い音です。これに対して、この2SK117 5パラMCヘッドアンプはゆったりとしていてかつ雰囲気のよく出る音だったのではないかと思います。2台の音の違いを表現してみると、SH-305MCは高NFBアンプのような音、このアンプは無帰還アンプの音です。そのくらいの違いが出ていました。この装置構成なので、MCヘッドアンプの部分でこれほで差が出るとは思っていなかったので、ちょっと驚きでした。


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