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CDとLPレコードの比較

 「パソコンで音楽を聴く」の中で、CDとLPレコードの比較について書きましたが、音が良いとか悪いとかいう問題は議論を始めるときりがなく、感情的になりやすいので深く追求するつもりはありません。 しかし、私も興味のある疑問ですから、ある程度客観的な比較をしてみたいと思います。
 比較するのであれば、少なくとも同じソースであることが絶対必要でしょう。 ここでは、私の所有するCDとLPレコードの中から、同じソースと思われるものを選んで比較してみることにします。
 しかし、単にCDとLPレコードの比較と言っても、問題点がいくつかあります。

(1) 同じソースなのに音が違うという問題
 CDによっては(もちろんLPもそうだと思うが)同じソースのはずなのに、細かい音が全く違っているものがあります。 手元にあるCDの例だと、MoodyBluesの輸入盤のDays of Future Passed(42284-4767-2Dream)に入っているNights In White Satinと、Greatest Hits(P25P 20310)に入っているNights In White Satinとでは、細かい部分の音がまるで違っています。Greatest Hits(P25P 20310)に入っているNights In White Satinは、静かに消えていくような音が団子になってしまい、分離できていません。 
 最初は、mp3エンコーダーによる音の違いかなと思い(実は、Days of Future Passedはm3e0.98β、Greatest HitsはYunaSoft MP3 Encoder 98でエンコードしていた。)両方ともm3e0.98βでエンコードし直して比較してみましたが、やはり同じ結果でした。つまり、古いエンコーダーと新しいエンコーダーの違い以上の音の違いがあると考えられます。
 今回は、手元にあるものだけで比較することにしましたので、この問題が結果に影響する可能性はあります。あくまでも、ここで取り上げたCDとLPレコードの比較ということになります。
(2) アナログ部品の組合わせの問題
 アナログでは、カートリッジ、アーム、ターンテーブル、ターンテーブルシート、アンプ、ケーブル、針圧、アームのダンプ量などで大きく音が変わります。しかし、私の手元には、私が調整した現有の装置以外に再生できるものがありません。 自分の装置だと、もっといい音が出るはずだという方も多いかと思いますが、他に手段がありません。
(3) どのように比較試聴するかという問題
 CDとLPレコードを全く同じ条件で再生することは不可能なのですが、比較するとなると、なるべく同じ条件にする必要があります。また、比較試聴する場合は、切り替える時間をなるべく短くする必要がありますし、何度も繰り返し再生する必要があります。wavファイルにして、比較する方法が有効ですが、wavファイルだとサイズが大きすぎるので、次善の策として、両者ともmp3にすることにしました。LPレコードは、KORG U1でAD変換し、m3e0.98βでエンコードしました。CDはリッピングしたwavファイルをm3e0.98βでエンコードしています。
 細かい音の違いはヘッドホンで聴くとよく分かるので、ヘッドホンを使いました。

 LPレコードには、不利な条件となっていますので、その分を差し引いて考えて下さい。

1.装置と使用するソフト
 LPレコードの再生系は以下の通りです。(ついでながら、このシステムから出てくる音は、トラックノイズが殆ど聴こえることがなく、音の分解能が高くて荒れた感じのしない音になっています。また、トレーシング能力が高いために、ビリビリするような余計な音が付くこともありません。高音と低音のバランスなどは、比較に用いたCDとほぼ同じになっています。)

1.1 LPレコード再生-録音系
  カートリッジ: オーディオテクニカ AT-160ML(針圧1.7gで使用)
  トーンアーム: オーディオクラフト AC-3000 MC-S/T ストレートアーム使用(ダンピング量はノーマル)
  ターンテーブル: デンオン DP-80
  ターンテーブルシート: パイオニア JP-501
  イコライザーアンプ: 自作CR型
  ADコンバータ: KORG U1
  録音ソフト: SoundEngine

 録音は、装置の電源を入れて30分間以上経過してから行いました。アナログアンプは、電源を入れてから30分間くらいは音の変化が大きいことがあるので、その対策です。
 録音レベルは、クリップしないように、ピークレベルで-3~-6dB程度で行いました。このままだと、CDとの音量レベルに差があるので、CDをリッピングしたwavファイルと聴き比べ、Soundengineでほぼ同じ音量になるようにレベル調整しました(内部的に24ビット処理)。
 ただ、CDと同じレベルにしようとすると、クリップしてしまう場合があったので、その場合は少し低めのレベルにしました。

1.2 CDリッピング
  CD-ROMドライブ: TEAC CD-540E
  リッピングソフト: Cd2wav32

1.3 mp3エンコーダー: m3e0.98β
 クラシック系の音楽は254kbps前後、その他は192kbps前後のVBRで処理します。

1.4 再生ソフト、装置
  mp3プレーヤー: lilith0.990a
  ヘッドホンアンプ: KORG U1
  ヘッドホン: オーディオテクニカ ATH-A9X


2.曲と、比較した結果

 比較した曲と、その結果を以下の表に示します。

NO.
曲名
CD
LPレコード
比較
私の判断

今はもう誰も(アリス)
Best collection(CT25-9044)
Alice V
(ETP-72165)
これは、LPレコードの勝ち。音が安定していて、安心して聴くことができます。一方、CDの音は良くありません。手抜きで作ったCDの見本のような音でです。音像が揺れるし、音が荒れています。
LP

親愛なるQに捧ぐ(加川良)
親愛なるQに捧ぐ(TOCT-9293)
親愛なるQに捧ぐ
(URG-4012)
CDの方がベースの張り出しが少し強い程度だけの違いであり、非常によく似ています。スクラッチノイズがなかったら、区別できないと思われます。
引分

風はそよ風(シモンズ)
シモンズヒットコレクション(BVCK-37027)
シモンズ ゴールド30(JRX-9011~12)
全体に大きな違いはありません。ただ、LPレコードの方が、右チャンネルの奥で静かに鳴っているギターの音が自然に聴こえました。
LP

世情(中島みゆき)
大銀幕
(PCCA-01246)
愛していると云ってくれ(VX-9002)
LPレコードの方が静かなバックコーラスの音が自然に再生できています。CDは中低音を強調しすぎていて、細かい音が聴こえにくくなっています。
LP

モーツァルト弦楽五重奏曲3番
(Smetana Quartet/Josef Suk)
COCO-6357
OX-7089-ND
元々がデジタル録音のせいか、CDの方が細かい音までよく聴こえます。単純に比較すれば、CDの勝ちです。ただ、ある音量から、急に音が削られるような感じがあり、音が硬く感じます。
一方、LPこれコードは、小さな音量へ自然に音量が下がっていくような感じがあり、やさしい音になっています。
CD

ベートーベン交響曲6番 田園
(Otmar Suitner / Staatskapelle Berlin)
198C37-7255
OX-7222-ND
CDの方が、高音が強調されたような音になっていて、弦がちょっと荒れたように聴こえます。ただ、元々デジタル録音であることが有利に働いていて、細かい音とまでよく聴こえ、スケール感もあります。
LPレコードは、やさしい音で、悪くはないのですが、CDに較べると分解能が落ちたように聴こえます。
CD

チャイコフスキーピアノ協奏曲1番
(Vladimir Ashkenazy / Lorin Maazel / London Symphony Orchestra)
POCL-5008
SLC8003
LPレコードの方が、音の広がりがあり、雄大に聴こえます。CDは、音が中央に集まり過ぎている感じがあり、スケール感がなくなっています。
LP

テイク・ファイブ
(Dave Brubeck)
Jazz Selection
(NLC-40)
ゴールドディスク(26AP 1321)
CDの方は、CD用にチューニングしてあるようで、ベース、バスドラムの音が豊かになっています。また、音に広がりがあります。
CDに比較すると、LPは古いジャズレコードのような音に聴こえてしまいました。
CD

 全体的な音の傾向ですが、私の装置でLPレコードを再生すると、CDよりも左右に音が広がる傾向があります。このため、LPレコードの方が、空間的な表現が有利になっているようです。一方、CDは音が中心に寄った音になっているのと、残響が少ないような感じの音になります。

 また、一般に言われているように、LPレコードの方が少し柔らかい音になります。ただし、今回のアナログ装置の組合わせでは、CDとLPレコードの音の傾向に大きな違いはありません。CDだから高音が強調されたキンキンした音・・・・・・などということはありませんでした。

 CDとLPレコードを比較した結果を見ると、最初からデジタル録音しているものはCD化したときにデジタル録音の良さが出ていて、CDの方が良い結果になっています。また、CD用にきちんとチューニングしたものも、CDの方が良い結果となりました。
 これに対して、CD用にきちんとした処理をしていないと思われるものでは、LPレコードの方がよい結果となっています。

 以上の結果から、LPレコードの方が音が良いという人の意見も理解できるし、CDの方が音が良いという人の意見も理解できるということになってしまいました。

 ただ、CDはきちんと作ればいい音になるということは、言えるだろうと思います。

付録
LPレコードの説明

alice
Alice V (ETP-72165)
このレコードは、非常に丁寧に作ってあります。特に、B面1曲目の「音の響き」は、パルス状の強い音が入っていて、気持ちのいい音が出ます。ただ、トレーシング能力の高いカートリッジでないと、再生は難しいかもしれません。

kagawa
加川良 親愛なるQに捧ぐ (URG-4012)
友人がよく歌っていた曲が入っていることから、買ってしまったLPレコードです。このレコードで加川良が好きになりました。

simons
シモンズ ゴールド30
(JRX-9011~12)
シモンズの曲は、時々聴きたくなることがあります。特別好きだというわけでもないのですが、不思議な魅力があります。

nakajima
中島みゆき 世情 (VX-9002)
「怜子」と「世情」に惹かれて買ったLPレコードです。

mozart
モーツァルト弦楽五重奏曲3番 Smetana Quartet/Josef Suk
(OX-7089-ND)
クラシックをよく知らなかったときに、何となく買ってしまった1枚です。
聴いてみると、いい曲だし、録音も良好だったので、よく聴くようになりました。

denen
ベートーベン交響曲6番 田園 Otmar Suitner / Staatskapelle Berlin (OX-7222-ND)
吉祥寺のディスクユニオンで、1枚200円で買ったものです。安売りしていたので、あまり期待していなかったのですが、聴いてみたら、スウィトナーの飾らない指揮が気に入ってしまいました。
これ以降、スウィトナーのCDを集めるようになりました。

piano
チャイコフスキーピアノ協奏曲1番 Vladimir Ashkenazy / Lorin Maazel / London Symphony Orchestra (SLC8003)
このLPレコードは、中古で購入したものを2枚持っているのですが、両方ともだいぶくたびれています。
それでも、CDの音がいまいちなのでレコードもmp3化して聴いています。
CD化するときに、なにか間違えたのだろうか?

take5
Dave Brubeck ゴールドディスク (26AP 1321)
友人が遊びにきたときに、いいレコードを買ってきたと言って、持ってきたレコードです。そのまま、我が家に置いてあります。


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